【まとめよう】幸福な王子
昔、ある町に王子の像が立っていました。身体は金箔に覆われ、両目の瞳はサファイヤ、腰の剣の装飾には真っ赤なルビーが輝き、心臓は鉛でつくられた美しい像です。 そこへエジプトへ渡る最中の一羽のツバメが、寝床を探して像のところまでやってきました。ツバメが王子の像の足元で寝ようとすると、頭上から大粒の涙が降って来ます。見ると金箔の王子の像が泣いていました。 王子の像は、その視界に入ってくる貧しい人達の生活ぶりを見て、悲しんでいたのでした。 そして王子の像はツバメに「貧しい人達に自分の身体に付いている宝石を分け与えてくれ」と頼みます。 ツバメは願いを聞き入れ、病気に苦しむ子供のいる家族にルビーを届けます。 願いを聞き遂げ、出発しようとしていたツバメでしたが、その翌日、王子の像は「まだ飢えに苦しんでいる人達がいる、もう一日だけ待っておくれ」願います。 早く出立したかったツバメですが、王子の切なる願いを聞き入れ、目のサファイアを貧しい劇作家に配ります。 いよいよ出立しないと間に合わなくなったツバメは、ついに王子の像に別れを告げようとします。 しかし王子の像の嘆きは収まりません。王子の像はまた「あと一日待っておくれ」と願い、もう一つの瞳のサファイアをマッチ売りの少女に渡してくれるよう頼むのでした。 ツバメは「そんなことをしたら目が見えなくなる」と心配しましたが、「貧しい人が救われるなら」と王子の像は考えを変えません。 その優しい心に触れたツバメは、エジプトへ渡ることを諦め、最後まで王子の像の願いを聞き遂げる決意をしました。ツバメは視力を失った王子の像のため、町の様子を彼に伝えるようになりました。 王子の像は自分の身体の金箔を配るよう願いましたが、配れば配るほど王子の像はどんどん見すぼらしい姿に変わり果てて行きました。 そして王子の像からかつての綺羅びやかな様子が消えた頃、町は冬を迎えます。 寒さに耐えられないツバメは身体がすっかり弱ってしまっていました。 死期を悟ったツバメは、最期に王子の願いが聞けて幸せだったことを告げ、最後の力で飛び上がり王子の像にキスをすると、ついに力尽きてしまいました。 それを聞いた王子の像は、ツバメが死んでしまったことに大きなショックを受け、ついに鉛の心臓が割れてしまいました。 二人が動かなくなった翌朝、町の人々は「いつの間にか美しく無くなってしまった。溶かしてしまう」と、王子の像を溶鉱炉にかけてしまいました。 しかし鉛の心臓だけは溶けなかったので、ツバメの死体と一緒にゴミ置き場に捨てられてしまいました。 その頃、神様が天使と一緒にこの町へやってきました。神様が天使に「この町で一番美しいものを持って来なさい」と命じました。 天使は、割れた鉛の心臓と、ツバメの屍を持って来ました。神様は「確かに、これぞこの町で一番美しいものだ。二人は天国に連れて行ってやろう」 こうして王子の像とツバメは、天国で幸せに暮すのでした。 オスカー・ワイルド
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